福岡市の障がい児保育判定基準表

 私は、ここ数年間、障がいのあるお子さんの保育園入園に関するご相談を受けたり、入園を断わられた事例について保護者さんと一緒に市役所への陳情に行き、話し合いをしたりしています。残念ながら福岡市役所のホームページでは、制度の具体的な内容、-判定基準はどうなっているのか、保育士の加配はどの程度つくのか-、について情報が掲載されていません。そこで、これらの情報に関してご紹介します。(文責:上角智希)

障がい児保育制度とは?

受入れ先の保育園が障がいのあるお子さんのために加配の保育士さんをつけてくれるよう、市役所が加配保育士を雇用する費用の一部を助成する制度です。
 保護者が申請書を提出すると、お子さんの障がいの程度について「障がい児保育指導委員会」という組織で判定が行われ、障がいの程度によって助成費の金額が決まります。
 ただし、障がいが重度であってもマンツーマンで加配をつけられるだけの金額は出ないので、保育園の手出しが出たり、保育士不足で加配保育士さんが見つからないということも起こるわけです。だから、障がい児保育の「軽度」と判定されたけれども実際には加配がつかない、複数のお子さんをひとりの加配保育士さんがみるというようなことも十分に考えられます。

福岡市障がい児保育制度のチラシ

障がい児保育判定基準表

福岡市障がい児保育判定基準表

 福岡市の「障がい児保育判定基準表」はズバリこれです。
・障がい区分は「軽度」「中度」「中度より重い」「集団保育困難」の4区分です。
(解説)「中度より重い」という表現は、重度・超重度ということでしょう。現在の制度は平成14年度から実施されています。当時は発達障害やグレーゾーンのお子さんのことは話題になっていませんでした。今は、上の4区分のほかに、軽度よりも軽いお子さんについて「一般保育の中で配慮を要する」(=加配の対象外)との判定を出しているそうです。
 ほとんどの方は、「中度より重い」よりも上の区分になるので、基準表にある手帳や障がいの等級から、どの区分になるのかだいたい予想がつくでしょう。

 問題は「集団保育困難」。 毎年数名だけおられます。 これが出されると保育園入園が非常に困難になります(保育園がOKと言えば入園でき、実際に入園したお子さんもいます)。判定の基準は、「保育士対児童が1:1の対応を常時要するもの。」です。他の区分が手帳や障がいの程度を明示しているのと比べて、とても曖昧な、判定者が変われば評価が変わることが十分に考えられる、困った判定基準となっています。私は「集団保育困難」判定で入園できない事例の支援に関わったことがありますが、市役所からはその判定となった具体的理由さえ明確に教えてもらえず、ご家族はそれはそれは大変です。改善すべき制度の欠陥があると思います。詳しくは別のときに書きましょう。

ちなみに、横浜市では判定基準をインターネットで公開しています。福岡市とは比較にならないほど手厚い支援です。重度の身体・知的障がい児には当然のように1:1で加配をつけてくれます。判定基準は障がいの種別ごとに細かく、保護者にもわかりやすく作成されています。同じ日本でも市町村によって内容は大きく違います。
 横浜市の判定基準はこちら

公文書公開請求をして調べた近年の障がい児保育の判定数は以下のとおりです。

加配保育士の助成金額

障がい児を受け入れた保育園に給付される助成金額は、児童1人あたり(月額)、「軽度」が65,000円、「中度」が97,000円、「中度より重い」が130,000円です。
 「集団保育困難」は制度上対象外となっていますが、入園された場合は「中度より重い」と同額が支給されます。

 現在、障がい児保育制度への申込みをした結果は、保育園が決まった場合のみ、保育園を通して通知される形になっています。ある保育園では、「加配はつきませんでした」と保育園の先生に言われて通知文を渡されたそうです。自宅に帰って開けてみると、市役所の通知は「軽度」判定と書かれていました。軽度で65,000円助成と判定されたが、その金額では保育士一人を雇用できないので加配をつけないとしたのでしょう。しかし、そんな事情を保護者に丁寧に説明することを省いたため保護者さんは混乱されました。通知の仕方も改善が必要と思われます。

私の地域の判定基準はどう?

私が暮らしている福岡市の事例を紹介しましたが、ご自身のお住まいの地域の情報を知りたいと思われている方がきっとたくさんおられるでしょう。
 インターネットで公開されている場合は、「○○市 障がい児(障害児)保育 判定基準」あるいは「○○市 障がい児保育 実施要綱」で検索すればヒットするでしょう。
 インターネットに掲載されていないとき、わが町の判定基準は非公開情報なのかと言えば、そうではありません。役所・行政は公平に仕事をする必要があるので、障がい児保育制度があるのならば必ずそのマニュアルが作成されています。マニュアルはふつう「実施要綱(じっしようこう)」と呼ばれます。知りたい場合は、役所の担当窓口に行って「障がい児保育制度の実施要綱をください」と言ってください。役所には、拒否する正当な理由がない限り、公文書公開の請求が市民からあれば公開する義務があります。法律で決まっています。
 電話や口頭で頼んだ場合はのらりくらりとかわして対応しない担当者がおられるかもしれません。そういう時は「公文書公開請求」の窓口に文書で依頼するのがよいでしょう。私はある自治体の職員をしていますので、以上のような行政の文書事務のノウハウを知っていますが、お知り合いに公務員の方がおられればお尋ねしてみてはいかがでしょう。難しくない話なので教えていただけると思いますよ。

福岡市のマニュアル類はこちらです。
「福岡市障がい児保育事業実施要綱」
「福岡市障がい児保育指導委員会設置要綱」

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